ノート
スライド ショー
アウトライン
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T 金融ビッグバン
  • 1996年11月(橋本総理大臣)金融市場を再生させるため金融システム改革を大胆に進めると宣言
  •  金融ビッグバン:シティのビッグバンに匹敵する改革
  •  資金を最適配分することが金融市場の役割で、これが金融システム改革の目的


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3原則
  • @フリー=完全自由化
  • 業態規制の撤廃、商品規制の撤廃、各種手数料の自由化、外為取引の自由化、運用規制の撤廃等
  • 新規参入と競争の促進、市場の活性化
  • Aフェア=公正透明性のある市場
  • ディスクロージャーが必要
  • Bグローバル=グローバルな市場間競争に対応


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U 金融システム改革が次々に実行され、自由化が進められる
  •  旧大蔵省による護送船団行政時代
  •   銀行、証券、保険などの金融機関は、規制されていた
  •   新商品開発から新支店開設など、経営上のあらゆる事項が大蔵省の許可なしには行えなかった
  •   貸出金利も預金金利も含め金融商品の競争条件は横並びで決められ、競争は存在しなかった


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制度改革の内容
  •  金融制度改革(金融ビッグバン)
  •  銀行、証券、保険という金融三業種の相互参入の障壁が除去
  •  各業界内部の垣根も撤廃
  •  商品に関する規制も大幅緩和
  •  金融、証券、保険の各業界相互参入⇒各業界の間に存在した障壁はなくなった


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 銀行など金融業界は自立した産業に変革すること必要
  • 銀行業界は旧大蔵省銀行局の強力な指導と監督下にあった
  • 監督当局は現在は金融庁と金融危機対応会議に移管
  • 金融市場でも「基本的に市場の自主性にゆだね、行政の関与は必要最小限に限る」ことが決められる
  • 金融行政の役割:産業の保護育成⇒ 金融市場が効率的に機能する制度整備と監視に限定される
  • 信用秩序維持・金融破綻処理など緊急時のシステムの企画立案機能は財務省に残る


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銀行の制度変革
  • 1997年の独占禁止法改正で持株会社の設立解禁が決定
  • 2000年3月までに
  •  @子会社に課せられている業務制限が撤廃
  •  A銀行と証券の垣根が完全に取り払われる
  •  B銀行内の普通銀行、信託銀行、長信銀の間の垣根が完全に取り払われる
  • 銀行の窓口で投資信託を扱うこともできるようになった。
  • 2001年から保険業への参入も可能


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参入自由化
  •  自由化は金融業界外からの参入も許可⇒ 一般産業の企業が金融子会社を持つことが自由になる
  •  イトーヨーカ堂を始めとして異業種からの参入も現実に始まる


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保険の制度変革
  • 1996年4月から新保険業法が施行
  • 子会社方式で、生損保の相互参入が許可⇒ 生損保兼営時代が開始
  • 親会社の営業網・販売網を子会社が共有するクロス・マーケティングを許可
  • コンピュータ・システムなどの経営資源の共有化が許可
  • 1996年10月から損保系生保11社と生保系損保6社が相互参入営業開始
  • その後、当初は完全な自由化を見送られていた分野、たとえば損保料率の自由化なども次々に解禁された。



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証券業務
  • 原則として免許制から登録制へ移行
  • 店頭デリバティブ業務や、引受業務など専門性や高度リスク管理が求められる特定業務のみ認可制
  • 証券業務の参入規制緩和⇒ 個人対象に低手数料のインターネット証券が誕生(売買シェアで5割超)


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信託業務1
  •  1992年 証券会社および普通銀行の信託業務への参入が子会社形式で許可
  •  1998年 制限があった参入形態や業務範囲の規制撤廃


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信託業務2
  •  資産運用を行う投資顧問会社や投資信託に対する規制緩和も進行
  •  信託約款の個別承認制から届け出制移行
  •  販売チャンネル多様化、運用の外部委託などが実現
  •  その結果、証券、銀行、保険、ノンバンクなどからの参入


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V 金融自由化が実現
  • 金融市場競争は、相互参入から再編統合による生き残りの時代に突入
  • 金融機関相互の再編統合がすすみ、巨大金融グループが次々に誕生
  • 金融機関の合従連衡は2000年前後から加速
  • 業種を超えた巨大金融グループが次々に誕生(みずほ、UFJ、東京三菱、三井住友、りそな)


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国内最大の金融グループの誕生
  •  2000年9月に、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行を傘下に置く持株会社みずほホールディングス設立
  •  2002年4月みずほ銀行(リテール業務)、みずほコーポレート銀行(ホールセール)で再発足


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みずほグループ企業
  • 3行の証券子会社合併で誕生したみずほ証券
  • 勧角証券と公共証券が合併したみずほインベスターズ証券
  • 安田信託銀行からの企業向け部門を譲渡された第一勧業富士信託銀行
  • 興銀信託銀行の合併によるみずほ信託銀行
  • 不動産・資金流動化・プライベートバンキングのみずほアセット信託銀行(安田信託銀行から社名変更)
  • 日本興行銀行傘下の新日本証券と和光証券が合併した新光証券


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株会社UFJホールディングス
  • 2001年4月 三和銀行、東海銀行、東洋信託銀行が設立し
  • 2001年7月に東海信託銀行を合併した東洋信託銀行が2002年1月にUFJ信託銀行に社名変更
  • 2002年1月に傘下の三和銀行と東海銀行が合併してUFJ銀行が誕生
  • 2002年6月に、UFJキャピタルマーケッツ証券とつばさ証券が合併してUFJ証券が誕生


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 三井住友銀行
  • 1999年2月に、大和証券60%、住友銀行40%の共同出資で大和証券SBCMが設立
  • 2001年4月 さくら銀行と住友銀行が合併して三井住友銀行+大和証券SBCMはさくら証券の全営業を譲り受け大和証券SMBCに社名変更
  • 2000年4月に中央信託銀行と三井信託銀行との合併で誕生⇒中央三井信託銀行
  • 同時に三井アセット信託銀行(さくら信託銀行から社名変更)に年金信託、証券部門を譲渡


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持ち株会社三菱東京フィナンシャルグループ
  • 2001年に東京三菱銀行、三菱信託銀行、東京三菱銀行の子会社である日本信託銀行の株式移転により設立
  • 三菱信託銀行が日本信託銀行を合併
  • 2002年9月に国際証券、東京三菱証券、東京三菱パーソナル証券、一成証券が合併して三菱証券


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 りそなホールディングス

  • 2001年12月に大和銀行、近畿大阪銀行、奈良銀行の株式移転で持株会社大和銀ホールディングス
  • 2002年3月 あさひ銀行が統合参加
  • 2002年3月 大和銀行の年金・法人信託を分離承継する大和銀信託銀行を傘下に設立
  • 2002年10月 あさひ銀行傘下のあさひ信託銀行は証券投資信託、退職給付信託などを大和銀信託銀行に譲渡した上で大和銀行と合併。大和銀ホールディングスは『』に社名変更
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"2003年3月 大和銀行とあさひ..."
  •  2003年3月 大和銀行とあさひ銀行が合併し、りそな銀行に社名変更
  •  2004年以降に近畿大阪銀行、奈良銀行との間で事業再編を行い、大阪りそな銀行、奈良りそな銀行を設置
  •  大和銀信託銀行もりそな信託銀行への社名変更を予定


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保険業界1
  •  2001年4月 大東京火災海上保険と千代田火災海上保険が合併、あいおい損害保険
  •    興亜火災海上保険が日本火災海上保険を合併し日本興亜損害保険
  •  2001年10月に三井海上火災保険と住友海上火災保険が合併して三井住友海上火災保険
  •  2002年4月 東京海上火災保険と日動火災海上保険が持株会社ミレアホールディングスを設立


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保険業界2
  •  2003年4月 共栄火災海上保険が合流予定
  •  2002年4月 安田海上火災保険が第一ライフ損害保険を合併
  •  2002年7月 安田海上火災保険が日産火災を合併して損害保険ジャパンとなる
  •  生命保険業界
  •  2004年4月 明治生命と安田生命が合併を予定


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V 金融の諸問題の検討
  • 不良債権問題とは?
  • 不良債権とデフレ対策の順番の問題
  • 金融機関国有化の問題
  • ビッグバンの功罪
  • 間接金融の問題



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不良債権問題
  • 政府のぬるま湯的政策⇒
  • 金融機関自体の変革が進まない⇒
    金融市場の機能不全が改善しない
  • 機能不全=不良債権の処理=倒産すべき企業に退蔵されている資金⇒新産業に再配分
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不良債権問題とその原因
  • @利潤が小さく返済できない
  • A担保=土地の価格が貸付金より低下し
  •  元本全額回収できない
  • B金融機関の体力(自己資金比率)が低下して
  •  不良債権を処理できない
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資本利潤率(%)の推移
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利潤と不良債権
  • 1990年度以前は5%前後
  • 1990年以降は長期不況で3%前後と
  • 異常に利潤率が低い状態が続いている
  • ⇒
  • 借金が返済できない企業が増加している


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地価の推移(6大都市工業地)
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地価と不良債権
  • 1990年代後半で長期的トレンドを下回っている。
  • 地価が長期的トレンド以下に低下している。
  • ⇒
  • 担保価値が低下して不良債権が増加している


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株価の推移
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株価と不良債権
  • 銀行が保有する株の価格がある程度高ければ、銀行の自己資本比率が高くなり、株を売って得た利益で不良債権を放棄できたが...
  • 注:自己資本比率=自己資本/貸付金
  • 8%以上にする必要がある。日経平均が8000円を割ると大手行平均の自己資本比率は、8%ギリギリに落ち込むため余裕がない
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不良債権を処理する2つの方法
  • @景気回復
  •  マクロ経済状況を変えて、不良債権を減らす
  •  具体的には、
  •  (A)需要を増加する
  •  (B)税制を変えて、資産価格を上昇させる
  • A不良債権処理
  •  銀行を国有化し、利子支払いが十分にできない企業を倒産廃業させる


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マクロ経済状況を変えると…
  • @不況を克服し、資産デフレ(時価と株価格の低下)を反転する
  • (A)景気回復⇒普通の企業は利潤が十分に増加⇒借入金が返済できる
  • (B)景気回復⇒悪い企業は利潤が十分に増加せず⇒借入金が返済できない⇒地価上昇のため担保を販売して元本回収できる
  • (C)株価が上昇して、銀行の自己資本比率が上昇する



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銀行国有化で企業を倒産させる方法
  •  日本金融機関(銀行、保険など)の不良債権額は、(Wall Street Journal 、Nov 21、2002によれば)本当は
  •  400兆円から500兆円(3−4兆ドル)。
  •  ちなみに銀行の貸付残高は約450兆円で、不良債権は約200兆円(1.5兆ドル)
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高い企業倒産比率
    • 可能な選択
    • @日本企業の約40%を倒産させる
    • A一部の不良企業を倒産させない
    •  例:ダイエー救済
    •  問題(A)どこで線を引くか恣意的
    •  問題(B)景気水準が変われば変わる



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国有化は可能か?
  • 銀行を国有化して、不良債権を処理すれば、200兆円の貸付金が焦げ付く
  • 国はどこからその資金を得るか?
  • 国債発行?
  • 現在でも700兆円の借金がある
  • 200兆円もの国債を追加発行できない
  • 何故か?買う人がいない!
  • 日銀が買う⇒ インフレ



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資金は非効率に配分?
  • 不良債権のため、ゾンビ企業から成長企業に資金が回らない?
  • 貸出残高減少+開始渋り⇒不良債権候補から資金を回収している
  • 国が干渉して、企業を倒産させない⇒債権放棄して、企業を生かしている。例:ダイエー
  • 金融緩和で貸付資金はある⇒将来性のある成長企業に資金を貸さないわけがない
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ビッグバンの功罪
  • 2002年末現在で金融市場ほぼ自由化された
  • 自由化の目的=効率的資金配分
  • 効率的資金配分は達成されたか?
  • 効率的に資金を配分するとは
  •  @非効率企業を倒産させ、新しい成長企業に資金を移動させる
  •  A倒産する確率の高い小企業や新しい企業には利子率を高くする
  •  コメント:日本でできるか?


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どんな効果があったか?
  • @金融機関が倒産するようになった
  • A虎の子がなくなる可能性が出てきた
  • B競争で銀行の体力が低下した
  • C貸し渋りが出てきた⇒倒産が増加した
  • D税金約8兆円を銀行にプレゼントした
  • E銀行を国有化(日本長期信用、日本債券信用銀行)し、良い部分だけを民間(含む米国企業)に売った


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ビッグバンのもう1つの意味
  • 小企業から効率的企業に資金を再配分するとは、所得の再分配では?
  • 意味=出町商店街をつぶして、Wallmart巨大店を作る
  • Happyになる人と不幸になる人が出てくる